【ベトナムの冠婚葬祭】突然の訃報にも対応できる!~お葬式編~

お世話になった人、大切な人とのお別れは全世界共通で突然訪れるものです。葬式・葬儀でのマナーを知らなければ、今後の人間関係にも影響しかねます。特に家族や仲間を大切にするベトナムの場合、どのような作法で振る舞えばよいのでしょうか?

そこで今回は、ベトナムでの代表的な葬式・葬儀の例をご紹介します。 突然の悲しい知らせにも、辛い気持ちを抑えベトナムのマナーに沿って参列できるようにしましょう。

ベトナムのお葬式の基本情報

ベトナムのお葬式はどんな人を呼ぶ?

葬儀はあくまでも近親者が中心のため、求められない限り出席する必要はありません。

しかしベトナムでは、死は悲しい別れというよりも、新たな人生の始まり、故人の旅立ちとして祝うべきものだという考え方があります。そのため、会場や霊柩車が派手で煌びやかな装飾を施されていたり、カラオケ大会が繰り広げられているんなんてことも。

一見宴会のようですし、実際親族に限らず、近所の人や通りすがりの人などまで、来るもの拒まずで歓迎してくれるので、少ししか関わりがなかった方だとしても、お世話になった方などであれば気兼ねなく参列しましょう。

特に南部では賑やかに送り出すことが好まれるため、一晩中カラオケをしたりおしゃべりをしたりして過ごし、三日三晩宴が行われる傾向にあります。

一部地域によっては葬儀中に笑顔を見せてはいけない所(北部に多い)もあるため、事前に知人にご相談をするといいでしょう。

ベトナムのお葬式はどこで行われる?

ベトナムの葬儀は基本自宅での開催です。一軒家であれば自宅で葬式を行えるのですが、アパート暮らしの方であれば、葬式場かお寺を借りて行われます。不慮の事故で亡くなった場合は家の中に魂が入れないという考えもあり、家の前(外)で行われることもあります。

3日間食事が途絶えないように、ケータリングを呼んだり、近所の人が総出で手伝う形式が多いようです。

ベトナムのお葬式の流れ

香典を渡し、受付を済ませる

ベトナムにも香典の文化があります。最近では「香典お断りします。」と記載した紙を玄関に貼ってある場合もありますが、一応用意はしていきましょう。

会場には受付があるので、そこで名前を言って香典を渡します。相場は20万ドン〜30万ドン、近しい関係なら50万ドン程度が一般的です。

祭壇で線香をあげる

祭壇には故人の遺影やろうそく、線香鉢、菊の生花が置かれ、両側に花輪が飾られています。日本より少し派手ですが置いてあるものは同じようなものです。

祭壇の方へ進み、遺族から線香を1本渡されるので受け取りましょう。この線香を持って遺影の前で軽く3礼し、線香鉢に線香を立てます。 ベトナム人は、そのあと3回跪拝をしていますが、日本人であれば3礼のあと1拝で特に失礼には当たらないので安心してください。

参考動画がありますので、ご覧ください。

https://youtu.be/dUBlm1_wf6w

棺桶の方へ

故人の遺体が安置された大きな棺桶は、会場の中央に基本的に置かれています。この周りを時計と反対回りに一周ずつしましょう。

死者を棺桶に入れ、お線香をあげたり花輪を飾るなどの一連の習慣は日本と同じです。 その後、遺族が遺影の前に立ち、参列の報告をします。

一般的には遺族、親族、近所の人、友人の順に行いますが、途中から参加した場合はすぐに行いましょう。香典を渡した時に伝えているはずなので、順に名前を呼ばれることもあります。その場合は名前が呼ばれたら前に進みましょう。

楽隊の演奏を聴きながら談笑

一通りの儀式が終わったら、座って楽隊の演奏を聞いたり、故人を偲んで談笑します。日本も楽隊の演奏こそないものの、故人との思い出話や昔の話に花を咲かせるのは同じですね。

食事やお茶、お菓子を頂く

会場にはお茶やお菓子、ケータリングのお食事などが準備されたテーブルと椅子が置かれています。これは、談笑しながら自由に食べていいものです。特に席は決まっておらず帰る時間も自由ですので、その場の雰囲気に合わせて過ごしましょう。

埋葬

式が一通り済むと、かつては冥器(紙や竹を使って作った、本物そっくりのお金や服)をばらまきパレードのような雰囲気で霊柩車を走らせ埋葬する場所まで向かっていました。

しかし葬儀1件当たり平均20kgの冥器やコメなどがばら撒かれており、清掃労働者の大きな負担となっていたことから、ダナン市警察では2015年ごろから、遺体を霊柩車で運ぶ時に道路上に冥器、冥金、本物の現金、その他の物を一切ばら撒かないよう葬儀社に指導しています。それもあってか現在は一部地域でそのしきたりはなくなりつつあるとか。

また、ベトナムではまだまだ棺桶ごと埋葬する土葬が一般的です。都会のほうでは火葬も増えてきましたし、お墓が無い人もいて、そんな人はお寺にお骨を預かってもらえます。

ばらまきはしないものの、棺桶には個人があの世でお金に困ることのないよう冥器がたくさん入っています。 また、一般的に四十九日を迎えるまで故人のために仏壇へ毎日米をお供えします。

ベトナムでは家族でひとつのお墓ではなく、個人個人のお墓があります。

ベトナムのお葬式のマナー

香典の紙幣の選び方

お札の種類に特にタブーはありませんが、赤と金(黄色)はめでたい色なので、5万ドン札(赤)や20万ドン札(黄色)は避け、20万ドンを渡す場合、10万ドン札(ダークグリーン)2枚などにしたほうが良いでしょう。

香典袋に関しても、赤と金の封筒は避けましょう。お金の他に、お花や線香、果物を渡しても良いですが、鮮やかな色のお花は避けましょう。

参列時の服装

日本では大人は喪服、学生は制服を着用して参加するのがマナーですが、ベトナムのお葬式ではそこまでの細かいマナーはありません。

しかし、喪服まで着る必要はありませんが、ベトナムでも普段よりきちんとした服装を意識しましょう。親族は白装束に白いハチマキをしますが、参列者は男女関係なく暗い色の服装が好まれます。

男性の場合は、黒や暗い色のスーツなどでの参列は間違いないでしょう。ノーネクタイでも構いませんが、ネクタイをつける場合も黒でなくでも失礼には当たりません。ただ、あまりに派手なものは避けたほうが無難です。基本的には女性も暗い色のワンピースやシャツにパンツなど、少し綺麗めの服装を選びましょう。

特に暑い時期や地域によっては、スラックスにシャツのようなラフな格好でもよい場合もあります。

故人の宗教を確認

ベトナム人の8割が日本と同じ大乗仏教ですが、キリスト教徒も日本より多いのが特徴です。また、イスラム教や儒教・仏教などにベトナムの民間宗教、キリスト教などの教義を混合した多重信仰カオダイ教などを信仰している場合もあります。

特にホーチミンに近い都市(南西部)にカオダイ教徒は多いので、参列前に確認が必要です。

その他のしきたり

鏡は幽霊を招くものと信じられているため、家の中にある鏡を新聞紙で覆ってしまうという風習もあるようです。鏡は亡くなった人の幽霊だけではなく、周りにいる幽霊も呼び集めてしまうと恐れられているからだとか。

妊婦さんや、病人、幼児(乳幼児)は葬儀に参列すべきではないとも言われています。

まとめ

ベトナムのお葬式についてまとめましたが、いかがでしたか? 似ている部分もあれば、知らずに参列したら戸惑ってしまうものもあったと思います。

大切な方との別れはなるべく避けたいですが、いつか必ず訪れることです。 そのときが来たとしても、マナーやしきたりに焦ることなく、穏やかな心で故人を送り出したいものです。